予期せぬお迎え

 傘に遠慮なく落ちてくる雨が気持ちよいほどにどかどか音を立てる。一方で、カバンが濡れていくこと、靴の中に水がしみてくることに不快感を感じながら、歩く。歩く。歩く。

 突然ふと、前を見る。そこには見慣れた、というより懐かしい小学校の通学路があった。

 小学校からの帰り道は15分。クラスの中では、割合近い方だ。それでも、毎日繰り返される投稿と下校。変わらない景色に、うんざりする。願いが一つ叶うなら、どこでもドアで家まで帰れればよいのに、と貴重な願いをくだらない方法で消化していることにすら気づかず友達と笑う。

 雨が降っているのは特に嫌だ。いつも長いと感じる帰り道が、五倍ほど長くなったような気がする。一歩進んでも、全然進んでいない。そんな最悪な気分に沈んでいたら、ふと遠くの方に小さく、見慣れた車が止まっていることに気づく。それは、道のわきで動かずじっとこちらを見ている。近づく。近づく。一歩が大きい。進む。進む。ナンバーを見る。

「え。」

「うちの車だ。」

 その瞬間、他の何よりも嬉しい。家に帰ってショートケーキがあったとしても、帰り道に予期せず自分の車を見つけることの方が圧倒的に嬉しい。もう、周りの雑音は消えて、そのナンバープレートのついた車と私だけの世界が出来上がる。嬉しくて、でもまだ信じられなくて、注意深く中を覗く。母が下を向いて座っている。私は運動会のピストルが鳴ったのを聞いたように走り出す。興奮して、ドアを勢いよく開き、母が顔を上げる。私は傘も畳まず、身を乗り出して聞く。

「なんでいるの。」

 

 予期せぬお迎えはそれまでもそれからもこの時のたった一度きりだった。

 私はこの時に願いを本当に叶えてしまったのかもしれない。