強い人
強い人。
サークルの後、六人ほどでお店に行きご飯を食べた。大学の先輩、後輩、院生などなど学年はバラバラで、その場にいた人が適当に集まってできた即席サラダのような構成。もちろん、そのメンバーでは初めての食事だ。
先に言っておくが、私は複数人での食事があまり得意ではない。三人以上の食事は、もはや食事ではなくおしゃべりなのだ。そして私はまだ台湾人が盛り上がって話している言葉を聞き取れるほど中国語が話せない。だから、以前にも何度か食事に誘われたことがあるが大抵の場合は断ってきた。
しかし、断られても気にせず何度も誘ってくれるのが台湾人の温かさであり、日本人とは少し違うところなのかもしれない。私はとうとうその誘いを受けさせてもらうことにした。
話が分からないときにどうすればいいかはもう十分わかっている。必要以上に笑いすぎず、かといって無表情にもなりすぎず。ただニタニタしてみんなのほうを向いておく。こうすれば場の雰囲気を壊すことはまずない。
だから私はいつものようにニタニタしながら座っていた。しかし、なんとなくいつもとは空気が違っていた。今までは私がしゃべらないでいると台湾人の友達同士でどんどん話がふくらみ、私はニタニタする必要すらなくなった。ただ、今回は話が深まるにつれ何もしゃべらない私の方へちらちら向けられる視線が合った。なんとなく居心地が悪い気がしてニタニタもできずにいると、ふと院生のお姉さんが「話、聞き取れないよね?」と聞いてきた。その瞬間盛り上がっていた話題が風船のようにしぼんでいき、突如私の下に注目が集まった。思いがけなく当てられたスポットライトに私は焦って、ただ正直に「全然わからないんです」と伝えた。それを言ってしまうと、みんなが話しづらくなると思って言い出せない一言を口にした。
それを聞くと、みんなは私に向けてたった今話していた話をもう一度全員で説明してくれた。最初のうちは申し訳なかった。でも、その話はすごく面白くて、そしてみんなが一生懸命説明をしてくれて、だんだん余計な邪念なく話に耳を傾けられるようになった。
そのお姉さんは、それからも話が盛り上がるたびに何度も「もう一度わかりやすく話してよ」と会話に割って入っていった。その度に私はみんなと同じように笑い、温かくなった。
帰り道でお姉さんにお礼を言ってから、一人家に戻る。色々な気持ちがぐるぐるめぐる。お姉さんへの感謝。私のことを気にかけてくれた余裕。会話を止めて救ってくれた勇気。私はただそんな人になりたい。
ただ、今になって思う。お姉さんのしてくれたことは私がやるべきことだった。本来なら誰も助けてくれない。お姉さんが私のために出してくれた勇気ある一言は私がお姉さんに言わせてしまった一言なのかもしれない。そう思うと、苦しくなる。
まずは自分を救う勇気を持つ。さもなければ、あのお姉さんみたいに勇敢に人を救うことなんてできないんだろう。